トップインタビュー
厳しい事業環境を変革の好機と捉え、
サステナブルな製品開発と技術革新で、
持続可能な未来に貢献します。
代表取締役社長 島 三博
- 当上半期の総括について
- 中期経営計画『Ever Onward 2026』のもと、アパレル・ファッション業界を中心にサステナブルなモノづくりを推進する製品・サービスの提案を積極的に展開しました。
当期(2025年3月期)上半期のアパレル・ファッション業界は、マーケットの活発化が期待されていたものの、中東情勢の緊迫化や世界的な景気減速、さらには暖冬をはじめとする気候変動の影響により、非常に厳しい状況に直面しました。
当社においても、横編機事業では、主力市場である中国では内需の回復が遅れ、第1四半期以降もホールガーメント®横編機などの設備投資が低調に推移しました。またイタリア市場でも、景気減速に加え、昨年の暖冬によるアパレル業界全体の設備投資意欲の減退が続いています。加えて、先進国向けニット生産拠点であるバングラデシュでは、7月の政変による混乱がサプライチェーンに大きな影響を与え、当社顧客の事業運営が困難な状況に陥りました。顧客の設備投資時期が不透明となったことで、第2四半期以降に見込んでいた大口受注も延期を余儀なくされています。
これらの結果、上半期の当初の予想を下回り、連結売上高は147億71百万円(前年同期比22.9%減)、営業損失は19億38百万円(前年同期は営業利益3億67百万円)、経常損失は20億35百万円(前年同期は経常利益5億64百万円)となり、親会社株主に帰属する中間純損失は21億24百万円(前年同期は親会社株主に帰属する中間純利益3億68百万円)となりました。
こうした外部環境の厳しさに直面しながらも、新中期経営計画『Ever Onward 2026』のもと、アパレル・ファッション業界を中心にサステナブルなモノづくりを推進する製品・サービスの提案を積極的に展開しました。特にソフトウェアのサブスクリプションサービス『APEXFiz®」の導入が欧米市場で広がり、欧米の大手アパレルブランドのバイヤーから、生産コストと時間の効率化に対する評価を得たことで、生産工場へシステム導入が広がり、好循環が生まれました。当社のトータルファッションシステム®によるデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進展し、サプライチェーン改革への確かな手ごたえを感じています。
- 下半期の展望について
- 横編機、デザインシステムのさらなる進化、自動裁断機のプロモーション強化、そしてアパレル分野以外での市場拡大に取り組んでまいります。
世界経済の先行きは依然として不透明な状況が続いていますが、当社は各市場へのアプローチを一層強化し、新たなビジネスチャンスを積極的に創出してまいります。特に、主力である横編機事業では、バングラデシュの政治的安定が見込まれており、当社機械の導入が進むことで、受注の回復が期待されています。引き続き、世界各国での展示会等を通じて強力なプロモーション活動を展開していきます。
また、デザインシステム関連事業においては、自動裁断機「P-CAM®」シリーズの市場投入に注力してまいります。ボリュームゾーンを狙ったプロモーションを強化することで、より幅広い市場でのシェア拡大を目指します。
デザインシステムでは、「APEXFiz®」のライセンス契約数が順調に推移しています。当社のデザインシステムは、デザインだけに留まらず、生産データへの変換が可能であり、デザイナーと工場をデジタルでつなぐ独自の強みを持っています。この技術により、生産性の向上とブランド価値の向上に貢献し、大手ファッションブランドからも高い評価を得ています。DX化が進むアパレル・ファッション業界においては必要不可欠な技術であり、今後も市場で大きな需要を見込んでいます。
現在、アパレル・ファッション業界は超高価格帯のハイファッションと低価格帯のファストファッションに二極化が進んでいます。その一方で、物価高騰やサステナビリティへの意識の高まりを背景に、古着市場が急速に拡大しており、今後もさらなる成長が予測されています。新品衣料と古着が同じ市場で競い合う時代の到来が予感される中、当社は古着市場でも選ばれる、長く愛される高品質かつストーリー性のある製品づくりにも貢献し、業界の活性化に寄与してまいります。
アパレル・ファッション業界のサプライチェーン改革を推進する一方で、アパレル分野以外への事業拡大も推進しています。当社の横編み技術は、多くの産業において未開拓のもので、応用の可能性は非常に高いと考えており、モビリティ、医療、家具といった分野におけるビジネスチャンスの創出に取り組んでいます。横編機の中でもホールガーメント®横編機はサステナブルなモノづくりにも貢献します。そのため、サステナビリティに敏感な欧州は事業成長の鍵を握る市場だと期待しており、まずは欧州市場向けに横編み技術のメリットと可能性を訴求してまいります。
下半期以降は、横編機、デザインシステムのさらなる進化、自動裁断機のプロモーション強化、そしてアパレル分野以外での市場拡大に全力で取り組んでまいります。また、バングラデシュや欧米市場での販売を強化し、新たな設備投資を促進することで、来期に向けた基盤を築いてまいります。
- 株主の皆様へ
- グローバル市場での競争力をさらに高め、持続可能な企業成長とより良い未来の実現に向けて、全力を尽くしてまいります。
株主のみなさまには、日頃より格別のご支援を賜り、心より感謝申し上げます。当上半期は、非常に厳しい事業環境の中で苦戦を強いられたことにより、誠に遺憾ではございますが、中間配当金を期初予想から修正し、1株当たり5円とさせていただきました。このような状況下にはありますが、アパレル・ファッション業界の変革に向けたビジネスチャンスと捉え、いまこそ当社の強みである「創造の力」を最大限に活かし、未来を見据えた製品開発と市場拡大に努めてまいります。下半期においても、グローバル市場での競争力をさらに高め、持続可能な企業成長とより良い未来の実現に向けて、全力を尽くしてまいります。今後とも、株主のみなさまのお声に真摯に耳を傾け、従業員一丸となって努力を続けてまいりますので、引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。